海辺でLSD
夏らしい天気が続きます。うれしいです。生きているって感じます。
さて、読み終えた「海辺でLSD」(川島誠)。男ばかり3人兄弟の末っ子が主人公の物語。
長兄裕は語るべきことがなければ沈黙を貫く寡黙な兄。次兄零はリラックスしているというか、向上心がないというか、明るく能弁な兄。三男の健(主人公)は、サーフィンに熱中する兄らと違い、高校入学とともに陸上部に入部する。高校も兄たちとは異なる進学校だ。陸上部では、長距離走を選ぶ。
青春物語特有な流れで、主人公は体育会系のはずなのに、内省的だ。それにそんなに積極的でないのに、女性(それも年上の女性)とすぐ親しくなりHしたりする。 いやー、女性と親しくなるにはもうちょい努力が必要でしょうが(笑い)。
7つの物語からなるが、最初の4作品は1993年から1995年に発表されたもの。書き下ろしの6つめの作品「オン・シーズン、オン」は文章も、主人公の心の流れも、初期のものとはずいぶんと違っている。偉そうなことを言えば、深みのある作品になっている。
バイト先のホテルに滞在する認知症の老婆、そしてその娘との交流を描くのだが、切ない感じになっているのがイイ。マウンテンバイクで走るシーンなど、坂道のギアの音と坂道を登り切って海を眺める風景が、リアルに浮かんでくる。
物語のどこにも、3兄弟の両親が登場しないのもユニーク。男兄弟って、成長するともっとも身近なライバルだし、親の影響は少なくなるからなぁ。 夏の緑陰で読むのに適した本だと思う。
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